幻(?)のPOP
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藤原北家の次男。
一般に、橘諸兄に奪われた政治的実権を取り戻すべく立ち上がった藤原氏の若きホープが藤原仲麻呂、ということになっているのですが、仲麻呂の目的は己一個の栄達にあったというほうが近く、実の兄豊成を太政官から左遷したり、この永手や百川(この人物はとっても面白い! いずれ「続編」で登場させるつもりです)など、藤原家の内部にも敵をつくってしまいます。その辺も仲麻呂の乱で味方に恵まれなかった理由かと思います。ま、自業自得ですな。
そうそう、永手の話です。この人は相当の野心家と思われますが、仲麻呂政権の間中、牙を隠してひたすら目立たないようにしていたらしく、太政官のそこそこの地位にありながら事件や陰謀にも巻き込まれず、ついに左大臣の地位に登り詰めます。
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広虫の三つ違いの弟です。
采女として宮仕えしていた姉がひょんなことから戸主と結婚してしまい、各郡から子女を一人ずつ宮仕えに出す、というルールに則って、兵衛として宮仕えしなければならない羽目に。トホホ……。
京では兵衛府に勤めており、しばしば義兄の戸主に無茶な頼み事をされて困り果てます。それをうまく断り切れない人の好さは生涯ついてまわり、それで役人として損をするかといえばそんなことはなく、はるか後年には、桓武天皇の右腕ともいわれる大政治家へと成長します。
この作品では主に「第四話 宇佐八幡」で大活躍しますが、ここでも生まれながらの、嘘一つついたことのない人の好さが裏目に出て、妖僧道鏡の思う壺に落ちてしまいますが……。
左の図で、妖怪人間ベムのような顔色をしているのは、瀬戸内海の荒波を乗り越えて宇佐八幡に神託を授かりにいく海路で、船酔いに苦しみ抜いているからで、ふだんからこういう顔色の人、というわけではありません。
ちょっと本文の紹介を……
右兵衛府に清麻呂を訪ねた。清麻呂は兵営の庭で宿直仲間と投げ矢に興じていたが、戸主に気づくと戸口まで出てきた。
「義兄(にい)さん、よくこことわかりましたね」
「今日は宿直だと広虫から聞いた」拳からつきだした親指で背後を指す。「ちょっと頼みがあるのだ」
兵営の裏手で頼み事を打ち明けられた清麻呂は思わず大声を出した。「えッ、私の権限でそんな事ができるとでも……」
「できる。万一上司に見つかったら、不審な者を発見したから部下に追いかけさせたが、まだ戻らないとでもいっておけ」
「そんな無茶な」
「無茶は承知で頼むのだ。明日一日でよい。おまえの部下で騎馬に巧みなやつを三騎、目をつぶっておれに貸してくれ。そいつらにも駄賃(だちん)ははずむ」
「そういう問題では……」
「おれの部下どもは書類仕事に長けていてもこういう荒事にはとんと向かん。騎馬でおれについてこられるやつさえ、たぶん一人もおらん」
戸主の言葉に清麻呂は耳ざとく反応した。「荒事、といいましたね」
「おまえに迷惑をかけたくないから中身は伏せる。自分の義兄(あに)を信じろ」
「もう十分に迷惑が……」清麻呂はぶつくさいっていたが、ついにあきらめた。考えてみればこの義兄の頼みごとをうまく断れたことは一度もない。「ええい、わかりました。明日の日の出前に三騎そちらに寄越します。それでいいんですね」
「やはり持つべきものは可愛い義弟だ」ふくれ面をした義弟の背中を、破顔しながらどやしつけた。「悪いがおれの馬と、あともう一頭、荷を担げる強い馬も貸してくれ」
「その二頭も空馬で、不審な者を追いかけて行くわけですか」清麻呂は精一杯の皮肉をいう。
「そういうわけだ。ははは」戸主は屈託なく笑った。
(第2話 正倉院)。
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八十年代テクノ・ポップの世界を舞台にした音楽ミステリ。このジャンルは、デビュー作『オルガニスト』以来です。テーマは「人間はなぜ自分以外のものになりたがるのか?」
内容
(帯のキャッチより)
僕は生涯、忘れない。別の自分を演じ続けた、あの男を。
素顔を仮面に隠し生きた完全演技者。人は、生まれながらの人格を捨てることができるのか?
愛と変容、転生。疾走する青春を描いた意欲作!!
NY、ソーホー。この街に降り立った大学生・オサムは、伝説のアーティスト・ネモの超絶パフォーマンスに心奪われる。仮面に覆われた倒錯的世界、現実ともつかぬ生活、未知の魔力がオサムを変容させてゆく。
自分でない、何かへ――。
登場人物
クラウス・ネモ
NYで活動するパフォーマンス・アーティスト。ステージ以外でも素顔、経歴、私生活を一切明かさないため、「トータル・パフォーマー」と呼ばれている。女声ソプラノ並の高く、澄んだファルセット・ボイスからテナーまで、七色の声を使い分ける。
オサム・イノ(シュウ)
本書の主人公。井野修。ネモのパフォーマンスに惹かれてNYに渡り、パフォーマンスの世界に飛び込んだ日本のロック・ボーカリスト。
ジェニファー
ネモ・バンドのメンバー。パーフェクト・ボディを活かして官能的なパフォーマンスで男たちを魅了する。
ボブB
ネモ・バンドのメンバー。MIT出身のマッド・サイエンティスト的パフォーマー。
オーヤン
チャイナタウンに住む凄腕の偽医者。自らも奇病に悩まされている。
パルマ
音楽誌のライター。オサムをネモたちに引き合わせる。
サラ
東京でオサムと同棲していた恋人。オサムの音楽活動をさまざまに支援する。
デビッド・ボウイ
もはや説明不要のグラム・ロックの覇者。
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別冊文藝春秋」に6回にわたって掲載された連作歴史中編『天平DINKS』を、ほとんど全面的に改稿した作品。はっきりいって全くの別物ですから、雑誌で読んだ方もぜひご一読を!
人々が闇に息づく魑魅魍魎を信じ、共に暮らしていた天平時代。平城宮で葛木連戸主と広虫の役人夫婦が幽界顕界とびこえて活躍する!
青丹よし奈良の都は~と万葉集に歌われた華やかなりし天平時代。権謀術数を巡らすのは重役でも、下っ端役人とはいえ否応なくその争いに巻き込まれ、上手く立ち回らねば無実の罪を着せられ、職を追われ、下手すれば命さえ狙われる。大仏建立に絡む行方不明事件をきっかけに親しくなったちょっと歳の離れた葛木連戸主(かつらぎのむらじへぬし)と和気広虫カップル。この二人がやがて夫婦となって、時に怨霊の力も借りつつ、権力悪に立ち向かう! 史実をもとに花開く、会心の天平ファンタジー絵巻登場。
構成
4つの中編からなる連作中編ですが、全体を貫く大きなストーリーもあります。
第1話 三笠山 (書き下ろし)
第2話 正倉院 (雑誌掲載作品を大幅に改稿)
第3話 瀬田大橋 (雑誌掲載作品を改稿)
第4話 宇佐八幡 (雑誌掲載作品を改稿)
主な登場人物(各自の名前は登場人物紹介へのリンクです)
葛木連戸主 光明皇太后の後宮・紫微中台の少忠。
藤野別真人(和気)広虫 後宮に仕える女嬬。後に戸主の妻。
藤野別真人(和気)清麻呂 広虫の弟。右兵衛府に勤める。
吉備真備 戸主の元上司。遣唐使や大宰府長官などを経て中央政界に返り咲く。
吉備由利 吉備真備の娘。広虫の同僚。
聖武天皇 第四十五代天皇。
光明皇后 聖武天皇の后。後に皇太后。
孝謙天皇(重祚して称徳天皇) 第四十六代天皇。聖武天皇と光明皇太后の一人娘。
藤原仲麻呂 紫微中台長官。皇太后の甥で藤原南家の次男。
弓削道鏡 孝謙上皇から寵愛を受け、看病禅師から大臣禅師になる。
藤原永手 藤原北家の次男。
賀茂角足 戸主の直属上司。紫微大忠と左兵衛率を兼任。
これから何日か、それぞれの物語や登場人物たちを紹介していきますので、ご期待ください。
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