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2007年9月25日 (火)

登場人物紹介(10) 弓削道鏡

Doukyou_face

道鏡は河内の弓削出身の一介の看病禅師だったのですが、孝謙上皇の「治療」に効があったとかで栄達を重ね、同時に孝謙上皇から寵愛、というか文字通りの恋仲になっていきます。看病禅師が高貴のお方を治癒して出世した例といえば、30年近く前、藤原宮子と玄昉法師の関係を思い起こすところですが、宮子と玄昉が男女の関係にあったという話は伝わっていませんので、それがさらにエスカレートするとこうなる、ということです。

さて、この作品を書くにあたって、人物像の構築にこれほど悩み抜いた登場人物はいません。尊敬する故・黒岩重吾先生は『弓削道鏡』で、権力欲も性欲も人一倍のギラギラした野心家を、しかも肯定的に描いており、これはこれで好きな作品なのですが、どうも私の体質に合いませんし、屋上屋を重ねることもありません。
そこで、せっかくの「冥所図会」ですから、あっちの住人の力を借りて(名前は伏せます)、自分なりの道鏡像を描いてみました。古代に行って確かめることはできませんけれど、神託事件以降に伝えられている事跡とか、下野国分寺跡を取材したときの印象などからすると、案外こんなところだったのかも知れないな、と密かに思っております。

Doukyou

ラスト近くの、禁煙しおえて脂っ気が抜けてしまったオトーサンみたいな道鏡は、われながらちょっと笑ってしまいます。

ここで本文を引用。

「主上、ただいまより清麻呂の持ち帰った神託が真正のものか否かを、明らかにしてご覧にいれましょう」
「手荒なことはいやですよ」主上はぼんやりと疎ましげにいった。
「ご安心召されよ。わが法力にものをいわせるまで」道鏡はにやりと笑い、清麻呂一人を自分の正面に呼び寄せる。「私の顔を見るのじゃ。決して眼を逸らしてはならぬ」
 そして手で込み入った印を結び、呪文を唱え始めた。印は、両の手のひらを合わせ、中の指三本だけを互い違いに組んで鳥の羽の形にしたものである。
「オン・マユラ・キランデイ・ソワカ……」
「なにが始まるのかしら」広虫が不安そうにつぶやく。

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