登場人物紹介(5) 吉備由利
なぜなら、由利が生まれた頃には、父真備はまだ遣唐使として唐の長安にいたはずだからです。学者はそこからただちに、「帰国してから迎えた養子であろう」などと結論づけたがりますが、実は意外な出生の秘密が……
それはともかく、さすが大秀才真備の娘として、物語のあちこちで知恵を働かせ、主人公夫妻を助けます。成人後は、ときどき子供みたいなことをする父親のお目付役をもつとめざるを得ず、ついつい婚期を逃してしまったり。
広虫とは同郷備前国出身で同年代ということもあって、生涯変わらぬ親友として数々の難局に立ち向かいます。
ちょっと本文を紹介。
「やはり女の身で天皇の重責を担うのは無理なのかしら」
という広虫に由利は口を尖らして反論する。
「あら、女の広虫までがそんなことをいっちゃ上皇様がおかわいそう」
「そうはいうけど、私は夫と二年離れただけで身も世もないほど淋しかったのよ。まして一生独り身で、国のことだけを考えていなければならないなんて、私だったらとても……」いいかけて由利がまだ独身だと思い出し、「ごめんね、そんなつもりじゃ」と詫びた。由利の表情から笑みが消えたからだ。
「ううん、別にそれはいいの。でも考えてみると変な話よねえ」つぶらな瞳を三白眼にして考え込んでいる。
「なにが?」
「だって男の天皇には皇后がいて、庶民同様の家庭も持て、内助の功もある。なのに女が天皇になると一生独り身でいなくちゃならないなんて不公平もいいところだわ。誰がそんなこと決めたの」
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