行けなかったSF大会
執筆のため蟄居していた網代から帰ってきた。百枚の目標には大幅にとどかず、五十枚がやっと。それ以降の四日間で二十五枚。ようやく全体が半分の五百枚を越えて、これなら書けるかもしれないと思えるようになってきた。原稿の枚数の話ばかりでこれを読んでいるひとには悪いけれど、小説家の仕事なんて、書いている最中はそれくらいしか励みになるものはないのである。
SF大会には、申し込みが遅れて出られなかったのだが、ネット上でいろいろな方が報告してくださるのでありがたい。野尻抱介さん『ふわふわの泉』星雲賞受賞おめでとうございます。それから野田司令の暗黒星雲賞も(W受賞という人もいるが、星雲賞はやはりロケットそのものが対象ということで)! 宇宙作家クラブの組織票を取り沙汰する声もあるけれど、人気投票なんだから組織票だってぜんぜんかまわないはずだ。
熊野洋『遙かなる大地』(上下、草思社)を新聞書評用に読み始める。現職の外交官の手になる現代ロシア小説で、これでもかというくらい情報量があるが、整理のモデルがすっきりしているからか、案外すらすら読める。書評のポイントはやはり「なぜ小説なのか」なんでしょうね。
それから、あちこちで話題になっているキム・ワンソプ『親日派のための弁明』(これも草思社)、『国定韓国中学校国史教科書 入門 韓国の歴史』(明石書店)あたりと比較しながら読んでいるが、いたって穏健な、事実に即した主張であって、なぜ韓国で発禁処分になったのかわからない(わかるけど)。反日を国是として国内をまとめている韓国や中国では、近現代史は政治の道具にすぎず(韓国では古代史も)、したがって歴史研究の水準が低い。日本にも政治に入れ揚げるあまり学者とは呼べなくなってしまった歴史「学者」は大勢おり、そうでない学者と「論争」をくりひろげているが、それでも全体の研究レベルは比較にならないほど高い。東アジアの歴史の共同研究などを言い出すよりさきに、まずそのあたりの水準差を埋めないことには、インピーダンス・ミスマッチを起こすであろう。
ECでは統一歴史教科書という偉業が成ったけれども、東アジアでは少なくともあと半世紀は無理だと思う。
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