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2000年12月14日 (木)

秘蔵のお宝、ぞくぞく

 いま、石橋美術館の別館が見逃せない。
 タイヤのトップメーカー・ブリジストンの創業者・石橋正二郎氏のいわゆる《石橋コレクション》のうち、印象派を中心とする西洋絵画は東京のブリジストン美術館に、明治時代以降の近代日本洋画は久留米市の石橋美術館に、それぞれ展示されてきた。だが、コレクション中、少なからぬ割合を占める日本の書画や、陶磁器などは、これまでほとんど公開されてこなかった。これらは普通の油絵とは、異なる展示環境を要するからだ。

 一九九六年十月に久留米の石橋美術館の別館が開館され、これらの作品がついに一般に公開される運びとなった。遠方のことで、なかなか足も向かなかったが、父を見舞うために週末ごとに久留米に飛ばなくてはならなくなり、人生の余得とでも言おうか、思いがけず訪れる機会ができた。
 常設展はなんと七期分に分けられ、名にしおう石橋コレクションの規模に驚く。つまり一度に見られるのは全体の七分の一程度なのだが、一度に見る分量としてはこの二、三十点くらいがちょうどよい。わたしが言ったときには《第二期 近代日本画と陶磁器》というくくりだった。鉄斎、不折にはじまり、渓仙、波山、魯山人、憲吉など。
 中村不折(1866-1943)のユーモラスな達磨図と寒山拾得図。
 冨田渓仙(1879-1936)の仙人観瀑図。わたしは渓仙という人にさほどうまさを感じない。とくに、動きの表現に何があると思う。ここの昇鯉図(1930)などは、はっきり失敗作だといいたいくらいだ。鯉の姿に動きが感じられないため、瀧を昇ろうとしているとはみえない。凍った瀧の表面に死んだ鯉がはめ込まれたように見える。だが、この観瀑図はおもしろい。
 日本画の変わったところとして、藤田嗣治の『桜花に蝶』。二センチほどの手のひら型の落款が、ヒトを食った感じ。
 いっぽう、陶磁は安心してみられた。
 板谷波山(1872-1963)の、氷華磁と称する、青磁と白磁の中くらいの大花瓶。文は葡萄。六代清水六兵衛(1901-1980)の「古希彩歯朶花瓶(1974)」。これは「古希記念制作」との、たぶん語呂合わせだと思うのだが、ちがうと恥ずかしいから強く主張しないでおく。表の金彩銀際の歯朶文と、見込み(?)のガラス質の緑釉の対比が絶妙である。秋月文と叢花文をあしらった銹(よう)の花瓶二つ。一尺五寸角ほどの桔梗飾皿。この六兵衛の収集はため息がでる。いやはや、石橋さんもお人が悪い。こんなものを隠してたのね。
 だめ押しは魯山人(1883-1959)の金襴手鉢。内側は灰釉に「吾唯足知」の文、外側は見事な紅地に、金彩の文がとぼけた味。
 本館との共通券を買って入ったのに、ここだけで時間がなくなり、本館のほうはお預けになってしまった。これは二ヶ月に一度用事を作ってでも、久留米に来なくてはならなくなった。

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